第5章 嫉妬
かかしサイド
三代目に報告が終わると、買い出しにいってくるといっていたアンナを思い出し、いつも行っているであろう店のあたりを探してみる。
しばらくして見つけたが、アンナと一緒にいる黒髪の後ろ姿をみて嫌な予感がした。
案の定、すいれんが殺気をはなってアンナを威嚇していた。
はぁ~…と大きなため息が漏れる。
いや、のんびりしてる場合じゃない。
とりあえずアンナを落ち着かせなければ…
アンナは俺の顔を見るなり、安心したのか震えは止まった。しかし、涙目である。
忍びでもない一般の人が、殺気をぶつけられてまともでいられるわけがない。
恐かっただろうに…
「殺気むける相手、間違ってるでしょーよ、すいれん」
そういうと、すいれんは気まずそうにして瞬身で消えた。
俺にあたるならともかく、直接アンナを探し当ててやってくるとは…
アンナはやはりすいれんとの関係を聞いてきた。
正直に話すと、不安だったのか表情がすぐれない。
あぁどうしたらこんなにもお前が好きだってことをわかってくれる?
冷静に装って話している自分とは裏腹に、心は焦りを感じていた。
そんな俺の心を一瞬で止めたのはアンナの一言。
「じゃあ…かかしが私のことほんとに好きだっていうこと‥いま証明して?」
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俺はアンナに会うまでは、体を重ねあうということは衝動的になった欲を吐き出すための行為としてしか思っていなかった。
要するに自分のためだけの、自己中心的なもの。
誘ってくるのも相手側が多いこともあり、利益は一致している。
相手のことなんて気遣ったことはない。
でもアンナは違う。
彼女と重なり合うことが、愛情表現の最大の証明にもなるのだということがわかった。
彼女の気持ちを満たしてあげるために、俺の愛情を感じて不安を消してもらうために必要なのだ。
それは俺にとっても同じこと。
アンナといると、新しく感じることが増えていく。
自分が前よりも人間臭く感じた。