第10章 どこにも行けない想い
名残惜しそうに彼の唇が離れて、
目を開けると、微笑む彼の顔が今度はきちんと目に映る。
・・・私は落ち着いていた。
「どこまで自分自身を誤魔化して一緒にいられるかちゃんと見ていてあげますから。」
黒崎君はさっきと同じ事を言う。
低い声に乗って、今度はすんなりと内容が入ってきた。
「・・・うん。」
神代君の事、すごく好きだった。
だから、ごめんなさい。
貴方が、私にソレを言うまでは・・・
知らないふりをさせてください。
どうかまだ傍に、
・・・傍に一緒に居させてください。
私のセイへの想い。
私の神代君への想い。
神代君の私への想い。
神代君を思うどこかの少女の想い。
全部全部すれ違ってどこにも行けない想い。
どうしたらこの想いを穏やかに眠らせてあげられるのだろう。