第5章 T.04
「……は?……私いいいい!?」
「そうだよ!由真ちゃんだよ!」
「いやいやいや、話が読めねーって!クソ、もっと分かりやすく説明しろ髭!!」
「わかったわかった、落ち着けイギリス」
わいわいする私たち(と言っても、私とイギリス)をフランスはうまくなだめると、こほん、と一息をついた。
さすが兄ちゃんだ。兄ちゃんの名前は伊達じゃないんだな…。一応。
「だってイギリス、お前の今までの俺たちといたときの行動をよく思い出してみろよ?」
その言葉を聞いて、うーんと首を傾げるイギリスが可愛いだなんで思ってない。断じて思ってないですとも。
「会議が終わったらさっさと帰っちゃうわ、飲みに誘っても絶対にノってこないわ…もうお前はイギリスじゃないのかと思ったぜ、俺」
「そ、そうなの?イギリス?」
「だ、だって由真が家に居るのに待たせんのは悪いだろ……こ、これは全然心配してるわけじゃないんだからなっ!」
うわぁ…そうだったんだ……。
知らないうちに心配掛けてた。
よく考えてみれば、会議に行っても、必ず夕飯には帰ってきてた。
それは私のためだったんだ。
私の知らないところで想われてたなんて。
小っ恥ずかしいような、嬉しいような。ふわふわして、きゅんとなる。
「い、イギリスっ」
「ななな、なんだよ」
「その、あ、ありがとう」
いつの間にかぽろりとこぼれ出た言葉。自分のそのままな、素直な気持ち。
イギリスにありがとうって言うの、何回目だろう。私は何回彼に感謝するのだろう。
…いつか、彼にありがとうと言ってもらいたい。
イギリスは照れ臭そうに頭をかき、そっぽを向いた。