第3章 T.02
今日、いきなり女が落ちてきた。
わけわかんねえことを言ってて、トリップしてきた、とか言っていた。
正直信じられない。トリップってなんだよ?異世界?並行世界?
確かにそういう語類があったとしても、それは空想の部類だ。実際に起こるわけがない。
ただ、目の前の少女はそんなことを真面目につらつらと語った。
まさかあいつの軍のやつがこんな意味のわからない嘘を言うっていうのも信じられなかったし、何より、あいつの目だ。
『…そうですよね』
『戦争中、なんですよね。そうだったら……当たり前なんですよね』
一体こいつは何を知っている?
何を知っていてこんな目をするんだ?
こいつにこんな目をさせる現実ってどういうことだよ?
何にも分からなかった。
ただあいつらと被ってもやもやした。
無償に気分が悪くなる。
今度こそは、何か、できるんじゃないかって思ったのかもしれない。
そのことをしたからって罪滅ぼしでも、何にもならないことだって分かっていたはずだ。
その後、あいつの本性を暴いて(あの変わりようには少しびびった)シャワーも部屋も貸した。
こんなに騒がしい生活はいつ以来だろうか。
仕方ないとため息を吐いている思いの裏に、少し楽しんでいる思いがあることにも気づいていた。