第5章 きっかけは手掛かり
ファーランとイザベルの褒め言葉にティアナは、喜びながらも謙遜する。
「そんなに褒められると照れるよ、それに久々に弾けて私も楽しかった。」
「なぁ、 ティアナは歌もヴァイオリンとかも上手いのに、なんで兵士やってんだ??」
無邪気にイザベルがティアナに訊ねると、さっきまでの笑顔が少しだけ強ばったのをファーランは見逃さない。
「ほんと、音楽だけでも食っていけるんじゃないか?もしかして恋人か家族が兵団にいるとか??例えば色男のエルヴィンとか?!」
困ったように眉を下げながらティアナは答えをくれた。
「うーん、音楽は好きなだけだし、自由になるために兵士になったの。それによく勘違いされるけど分隊長とは、そういうんじゃないよ。」
「ふぅん。エルヴィン分隊長に片想いか?」
ファーランの言葉にクスクスとティアナは笑い、イザベルは「ティアナ!アイツは性格悪いからやめとけ!」と半ば本気で心配している。
「そういえば、イザベル達のお友達は一緒にはいないけど、彼は何してるの?」
不味い。踏み込み過ぎたか?ファーランは内心ドキッとした。
プライベートを探っていたら、自分達に興味を持たせてしまった。
「あー、夜空を見てるんじゃないかなー。月を眺めるのが好きらしくてさ。」
「そうなんだよ!アニキは一人で月見るのが好きなんだよ、なっ!ファーラン!」
ファーランとイザベルの勢いにキョトンとしたティアナは
「そっか、今度もし良かったら話してみたいな。イザベルとファーランの友達なら仲良くなれそう。」
「リヴァイのアニキすっげえ強くて、優しいんだぜっ!」
「おい、イザベル。あの仏頂面を褒めすぎだろ。それよりもティアナこそ、いつもここで一人で歌ってるけど、誰かと一緒には来ないのか?」
なんとか話題を逸らしたいファーランはティアナに話を持っていく。
「みんな来ちゃうと私の歌に興奮して次の日の訓練、大変になっちゃうから。」
戯けてティアナが言うとイザベルが真剣な顔で
「もったいないなぁ。金取れるのに……」
と言ってしまい、ティアナとファーランは顔を見合わせて笑ってしまった。