第5章 思い出の公園へ〈主人公目線・津軽目線〉
〜津軽目線〜
あー、やっと瑠璃子に会える。
結局俺は、あの女を抱いた。
女から、情報の収集は出来なかったものの、潜入先で、モモがほんの僅かな資金の流れを辿って、反社会勢力とIT企業との資金の流れを掴んでくれた。
どうやって、ウサにデートを断ればいいのか、考えていた時だった。
「津軽さん、掴みましたよ」
LINEのメッセージは今朝の6:18分に入った。
モモからのLINEを読んだ時には、暗く塞いでいた気持ちが、ぱっと明るくなって、モモの肩をバンバン叩いてやりたい気持ちでいっぱいになった。
モモは、今までも、良くやってくれてたし、今回も期待はしていた。
だけども、今回は、ウサとのデートが絡んでいたから、格別で当然だ。
しかも、抱きたくもない女を抱いて、その女と同じベットで横になっていたのだから。
綺麗なモデル並の女の寝顔なのに、酷く汚らわしいものと一緒にいる様な気分だった。
モモが、情報を掴むまで、俺の心は、揺れていた。
ウサとデート出来ないのも、所詮、俺とウサが、この先でも上手く行かない事を暗示しているかのように感じた。
そして、俺には、ウサを幸せになんか出来る資格などないと、なにか大きな運命の流れに言われている様にも感じていた。
横で眠る女の横で、頭を巡るのは、ウサの事ばかり。
初めて出会った頃のウサ。
一緒の潜入捜査で、俺を必死に助けに来た真剣な顔のウサ。
俺にお菓子を口に突っ込まれて、嫌そうな顔のウサ。
俺を潤んだ目で見つめるウサの顔。
ウサの困った顔。
ウサの笑った顔。
ウサの悲しむ顔。
そして、俺が一番大好きなウサの俺を心配する時の顔。
ウサの事を考えながら俺は、思った。
どうせ、上手くいかないというのに、何故俺は、こんなにウサを好きになってしまったんだと。
俺の日常がウサに侵食されたのか、それとも、俺がウサの日常を侵食したのか。
答えは、出なかった。
その答えを見つけるには、ウサは俺にとって、必要不可欠な人間になり過ぎていたのだ。
もう、先がどうなろうと、今日ウサと会える。
それだけが嬉しくて、女と体良く別れた俺は、車を飛ばしてマンションへと向かった。
良くよく考えると、ウサと同じマンションに住む事になったのは、
俺達に、何か深い縁があるのだとさえ、今なら思う事も出来る。
ゲンキンなもんだ。俺も。