第4章 初めてのデートの約束 〈津軽目線〉
腕時計を見ると、時計の針が、17時57分を指していた。
頭に浮かぶのは、ウサのふにゃっとした笑顔.。
ハニトラ相手の社長秘書がトイレに立ったのをいい事に、
ウサにLINEを送った。
どう打とうか考えた挙句、
『帰りちょっと遅くなりそうだから、ウサちゃん、先に帰ってていいから』
俺の帰りを待つであろうウサを班長として、退庁させる為の文章にしたつもりだったが、
ウサからの返信を読んで、焦った。
『お疲れ様です!明日無理しないで大丈夫です。わたしも部屋の掃除とか、色々ありますんで..たまの休みだし(笑)』
(何からっと、デート断ってんだよ!!今ここに無理して女連れ込んだのも、ウサと明日デートする為だよ!分かれっつーの!!)
危うく、苛立たしさ紛れに、ホテルの部屋のサイドボードに蹴りを入れそうになる。
『は?お弁当係が何言ってるのよ?』
と慌ててLINEすると既読に直ぐになったのに返信がない。
イライラしながら、
『明日10:30、マンションの駐車場、ウサちゃん遅れないでよ♥』
と送信。
ウサの既読は、付いたのに、また返信が遅くて苛立っていると、トイレのドアが開いた音がして、スマホを背広のポケットに慌てて入れた。
「光太郎さん、今日は一緒に朝を迎えれるのよね?」
社長秘書が、俺の偽名で呼びかけて来た。
グロスで光る唇が生々しい。
ウサと思いが通じてから、この女と深い関係になるのを避けていた。
この唇と、またキスするのかと思うと、ウサを助ける目的でした観覧車でのキスが俺の脳裏に蘇った。
解毒剤を飲み込ませる為の苦い命懸けのノーカンのキス。
無性に瑠璃子が恋しい。
「光太郎さん」
社長秘書の細い白い指先が、俺の頬を意味深に撫でる。
ウサなら絶対しない女の行動に心底嫌気がして、顔を背けてしまった。
(やべ....仕事ーーーーーー!!!)
女が、一瞬怪訝な顔をして俺を見た。
「すみません。真由美さん、ちょっと疲れてて、それより、今日は、一緒にシャワーを浴びませんか?
女を後ろから抱き締め、低い声で、女の耳元で、囁いた。
女は案の定、機嫌を直して、含みを持たせた笑顔で、俺の頬にキスをすると、シャワーは一人がいいのっと言って バスルームへ消えてくれた。
※真由美 社長秘書の名前