第10章 潜入捜査 〈津軽目線〉
公休日明け、銀さんからの電話で目が覚めた。
公安の監視下にあった【愛の下僕会】がテロの動きがある事についての捜査の指示がある様だ。
寝不足で重い頭のまま、公安課に行くと、銀さんの待つ室長室に行った。
「高臣、公安で監視下にある【愛の下僕会】だが、テロの噂が現実化しそうだ。上からの圧力もある。朝一に捜査会議をする。準備しておけ。捜査は、石神班、加賀班も応援に出す」
「分かりました」
俺が、室長室を出ようとすると、銀さんに呼び止められた。
「高臣、お前、大丈夫か?」
銀さんは、俺の様子の違いに気付いたのか、心配している様だった。
「大丈夫です」
とだけ言って、俺は、室長室を出た。
モモに早く登庁する様に電話した。
ウサにも、連絡するか迷ったが、連絡しなかった。
モモは、登庁するとすぐ、俺の右手の包帯に気付いた。
モモは、心配そうに言った。
「津軽さん、どうしたんですか?それ」
「ちょっと、擦りむいた」
「擦りむいただけで、包帯しないでしょ?」
と聞いて来たけども、俺が言いたくない事を察してそれ以上聞かなかった。
【愛の下僕会】のテロの阻止と教祖の新垣の逮捕が急務だとすると、大掛かりな捜査になる。
俺は、捜査会議の資料をモモと作っていた。
大きい捜査がある事で、忙しくなる事が返って良い様に思えた。
ウサが登庁して、捜査会議が始まった。
俺が大まかな【愛の下僕会】の今回の任務と概要を説明した。
当初、連続殺人事件は、他班が追っていたが、テロの情報が入った為に、津軽班で指揮を取る事になった。
俺の捜査の概要説明が終わると、銀さんが言った。
「百瀬と香月に【愛の下僕会】に入信してもらう」
【愛の下僕会】では、教祖のお気に入り女性信者に性的強要の噂があった。
俺は 思わず、銀さんに意見していた。
「香月を入信させる事は、教祖に性的関係を強要される可能性があるので、他の捜査方法でいくのが良いと思います」
銀さんは、少し苛立ちを含めた顔で俺に言った。
「この宗教団体の教祖を野放しにする事で、今後も殺人事件は、起こり続けるだろう。また、この宗教団体のテロのが起これば、どれだけの死者が出るか分からない。
この教祖の逮捕は、多くの市民の安全に関わってる。それでも、香月の入信に反対か?」