第9章 潜入捜査〈主人公目線〉
わたし達が公安課に戻ると、津軽さんに呼ばれた。
「ちょっと、香月、屋上に来い」
百瀬さんが、わたし達をちらりと見たけど、デスクの仕事を直ぐに始めた。
警察庁の屋上に着くと、津軽さんが言った。
「君の、今度の任務は、かなり危険が伴う捜査だと分かってるのか?」
色々あったけれども、津軽さんは、今は上司として、わたしを心配してくれている。
それなら、わたしも、津軽班の部下として、誠実に答えようと思った。
「【愛の下僕会】の修行施設に一回入ると、事件が解決しないと出て来れない。それでも、この任務を遂行したいのか?」
「はい、わたしに潜入捜査させて下さい!必ず、新垣の事件関与の証拠を掴みます」
津軽さんは、大きな溜息をついた。
そして、津軽さんは、言葉を選びながら言った。
「俺達の個人的な事が関係してるのか?」
「そんな事は、ありません!わたしも公安刑事です。この事件を一刻も早く解決すべきだと思ってます」
津軽さんを真っ直ぐ見つめて言った。
「香月、俺は上司として、君が心配だから言ってる。分かるだろ?」
(分かってます!あなたがもう、わたしを恋人として受け入れる気がない事なんて!でも、だからこそ、頑張りたいんです)
「はい、分かってます」
「モモも、一緒だが、モモの任務は、もっと危険だ。君をカバー出来ない。それも、分かってるのか?」
「覚悟してます。わたしも銀室の一員なんです。銀室長も、わたしを信じて、任された任務だと思ってます。だから、わたしに行かせて下さい」
「香月、俺の命令だ。お前の身に危険があった場合は、お前の危険を回避しろ。その時は、俺がフォローする」
「この【愛の下僕会】の任務は、石神班、加賀班も、万全な体勢で捜査のバックアップはする。でも、最前線は、君達二人だ」
「はい。それも、分かってます」
津軽さんは、わたしの顔をじっと見つめた。
「分かった。石神班、加賀班と話し合って、【愛の下僕会】への潜入日時を決める。キミに、出来るだけ多くの情報を渡す。キミの方でも、知りたい情報に付いては、細部にわたって上げておけ」
「ありがとうございます」
津軽さんは、また、わたしをじっと見つめた。
(津軽さん、わたしこの任務を成功して見せます!必ず!)
わたしは、津軽さんに一礼して、屋上を後にした。