第9章 潜入捜査〈主人公目線〉
月曜日の朝、津軽さんとの事を考えて重い足取りで、公安課ルームへ入ると、捜査会議で会議室に呼ばれた。
今回の任務は、宗教団体【愛の下僕会】の殺人事件の証拠を掴む事とテロの阻止が任務だった。
大まかな概要は、津軽さんが説明した。
【愛の下僕会】が、関与されたと思われる連続殺人事件。この連続事件には特徴があり絞殺した後に、胸に十字架型の切創が付けられてる事。テロの噂もある事。
銀室長が言った
「百瀬と香月に【愛の下僕会】に入信してもらう」
わたしの任務は【愛の下僕会】へ入信し、教祖の殺害命令の証拠を掴む事だった。
教祖は、側近の女性に性的関係の強要の噂もある。
百瀬さんの任務も【愛の下僕会】へ入信だったが、彼の任務は、
テロの阻止であった。
【愛の下僕会】が近々テロの準備をしている情報が入っていたからだ。
津軽さんは、珍しく銀室長の命令に反論した。
「香月を入信させる事は、教祖に性的関係を強要される可能性があるので、他の捜査方法でいくのが良いと思います」
「この宗教団体の教祖を野放しにする事で、今後も殺人事件は、起こり続けるだろう。また、この宗教団体のテロのが起これば、どれだけの死者が出るか分からない。
この教祖の逮捕は、多くの市民の安全に関わってる。それでも、香月の入信に反対か?」
銀室長が津軽さんを見て言った。
「わたしに、行かせてください!!」
わたしが、津軽さんの反論を押し切って、銀室長に言うと、津軽さんは、驚いた顔でわたしを見た後、黙って眉間に皺を寄せて、目を瞑った。
わたしと、百瀬さんは、【愛の下僕会】の教祖が、説法をしているという、都内の公演会場へ百瀬さんの運転する車で向かった。
「お前、大丈夫なのか?」
百瀬さんが、ちらりとわたしを見て言った。
「津軽班の為に頑張ります」
「ちっ、カッコつけやがって」
と、百瀬さんは、舌打ちして言うと、会場まで、黙って車を運転した。
公演会場の駐車場に着くと、わたしと百瀬さんは、時間差を付けて会場に、入った。
【愛の下僕会】教祖の説法が終わると、信者らしき男性二名と女性三名に囲まれて、入信を勧められた。
わたしが、わざと、少し考えさせて欲しいと言うと、
「貴女の健康の為に、教祖の祝福だけでも、受けませんか?」
と、にこやかに微笑む女性信者に言われた。