第1章 憧れと現実
嬉しさのあまり千秋に抱き着くと、そのまま身体を抱えあげられた。
「ち、千秋?」
「何?」
「えと、どこ行くの?」
「寝室だけど?」
「私今日は流石に帰るよ?今からならまだ電車あるし実家に……」
「良いから、今日は泊まってけって。
んで明日荷物取りに戻るぞ」
「え、でも」
暗かった寝室の明かりが灯き、ベッドに投げられる。
ちょっと固めなベッドで身体が痛い。
「ちょっと千秋!」
「なに」
「何じゃないわよ、何するの?」
「セックス」
「は!?」
「だからセックス」
「2回も言わなくても聞こえてるわよ。
なんで私があなたとするのよ、欲求不満なら他を当たってよ。
千秋なら選り取りみどりでしょ」
私の上に跨る千秋の表情はなんとも艶やかだ。
ギシリ……とベッドが軋む音がして我に帰る。
いくら幼馴染みでも私はそう簡単に身体を許すような女じゃない。
馬鹿にしないで。
「なんでもする。
さっきそう言ったよな?その言葉は嘘だったの?」
「う、嘘じゃないけど、流石にこれは……」
「嫌?じゃあ出てく?」
「それも嫌!」
「ワガママ過ぎ。
じゃあどうすんの?選べよ。
俺とセックスしてこの部屋に住むか、出てくか。
まぁ今のこの時期不動産屋は大忙しだと思うし?
あと何より家賃は高いけどな」
「う……」
千秋の言葉がグルグルと頭の中を回っていく。
今日だけで色々あり過ぎて爆発しそうだ。
「良いの?拒んで。
結構ないと思うよ、こんな好条件。
家賃折半、家事分担、その上イケメンな俺が居る」
耳元で低く囁かれる。
腕は元より頭の上で拘束されていて。
脚には硬いナニカが当たっている。
「さぁ、どうする?」
「……や、やれば良いんでしょ!」
「不正解。そんな言い方じゃ勃つもんも勃たんわ」
「じゃあなんて言えば良いのよ」
「あっそ。そんな雰囲気なら抱く気失せるし良いわ。
この話はなかったことに」
「わっ、ま、待って!」
「ナニ?」
私の顔を見て余裕そうに笑う千秋。
その顔めちゃくちゃ腹立つ。
でも今の私はお願いする立場だからそんなこと言い訳にもいかず……。