第2章 しろつめくさ×秀吉
渡す約束をして解散となった軍議の帰り道、秀吉が珍しく困ったように笑って呟いた。
「三成のやつ、余計なことを言ったなぁ。」
「え?…あ、作るのなら大丈夫だよ!
みんなのためなら苦じゃないし…」
「いや、そうじゃない。」
そう言うと、秀吉さんがクローバーのお守りを取り出して視線を落とす。
「これは俺だけのものが良かった…って言ったら子どもっぽくて可笑しいよな。」
「秀吉さん…」
珍しい。焼きもちって思っていいのかな。
本物のクローバーが見つけられなかった代わりに過ぎなかったお守りなのに。秀吉さんは想像以上に大切にしてくれているんだ。
「…秀吉さん、シロツメクサの花言葉覚えてる?」
「あぁ…幸運や、約束だったか。」
「あの時、色々あるって言ったでしょ?まだ言っていなかったのがあるの。」
秀吉さんの目の前に立ち止まって、その手のクローバーに手を乗せる。これに詰め込んだ思い…それは_____
「『私を思って』だよ。
戦で離れてても、どんなに苦しい戦況になっても…私のことを思い出して、私の元へ帰るって思ってほしかったの。
それだけはこのクローバーにしか込めない思いだから…これは特別。」
秀吉さんは驚いた様子で目を見開いたかと思うと、すぐにあの大好きな笑顔に変わった。重ねた手が引き寄せられて、そのまま抱き竦められる。
「ははっ、どうりでお前が頭から離れないわけだ。」
「ほんと?効き目があって良かった。」
おかしくなって、二人で笑う。
本物ではないけれど、確かに祈りを届けたお守り。どんなに離れてても、どんなに時間が経っても、このお守りが思いを繋いでくれるはず。そう確信して、重ねた手に強く力を込めた。
〜end〜