第1章 ひまわり×家康
(ちよside)
「えっ、ひまわり畑があるの!?」
初夏も過ぎ去ったある日の安土城。
いつものように私の部屋を訪れていた佐助くんが伝えてくれた言葉に私の胸は躍った。
「この前任務で通った地域で見かけたんだが、恐らくあまり知られていないんじゃないかな。ちなみにもうすぐ見頃を迎えそうだった。」
「へぇ〜!この時代にも咲くんだね、ひまわりって。」
「本来ならこの時代よりもう少し後に伝来するはずの花だが…
タイムスリップが起きるくらいの世界だ、これくらいのことは起きても不思議じゃない。」
「見にいきたいなぁ、どのあたり?」
「ここからでもそう遠くはないよ。何か書くものは…」
佐助くんに筆と墨を渡すと、さらさらと簡単な地図を書いてくれる。最近はここの地理にも慣れてきたから、確かにすぐに行けそうな場所だと分かった。
「いい情報をありがとう、佐助くん。」
「いや、たいしたことじゃない。それにひまわりを知っているのはこの時代には君だけだから、知らせたかったんだ。」
「そっか…みんなは見たことないんだね…」
「あぁ。…じゃあ、あまり長居しても悪いから俺はそろそろお暇する。」
「うん、またいつでも来てね。」
佐助くんは器用に天井裏に戻っていった。
天井板がカタリと直されたのを見届けて、再び手元の地図を見直す。
ひまわり…現代では夏になるとよく見に行ったっけ。
頭の中に浮かぶその輝かしい花を、一緒に見たいとまず思い浮かぶのは___
「家康、もうお仕事終わったかな。」
大好きなその人のもとへ、地図を握りしめ思わず駆け足で向かった。
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「ひま…わり?」
「うん!他の花より大きくて、とっても綺麗な黄色の花なんだ。見に行かない?」
「…どこにあるの?」
やった、興味を持ってくれた!
嬉しくて、急いで握りしめていた地図を床に開く。家康はそれに少し目を通して、すぐに顔を上げた。
「…あの忍、あんたの部屋にまた来たの?」
「えっ。」
「500年後に咲いてる花の場所教えてくれる人なんて、あいつしかいないでしょ。」
ジトーッとした目で睨むその眼差しが不機嫌だということを伝えてくる。