第1章 ひまわり×家康
気を失ったように眠りについた俺たちは、どれくらい眠っていたのだろう。覚醒しきらない意識の中、腕の中に感じるちよのぬくもりだけがはっきりと心地良くて、ギュッと抱きしめる。
差し込む光の角度から、陽がずいぶん高くまで昇ってしまっていることが分かる。
「ちよ…」
「ぅ…ん…」
「…ぐっすりだね。」
昨日はがっつきすぎてしまったかなと、こうして朝を迎えるたびにいつも思う。いつまで経ってもちよを前にして余裕なんか生まれない。もっともっとと求めてしまって、小さな体に無理をさせてしまう。
それでも日に日に増していくちよの愛らしさが、俺の思いに拍車をかける。きっとこれから先も、昨日のような喜びが上書きされていって、ちよから抜け出せないんだろうな。
そう確信しながら、愛しい人の額に口づけを落とす。
「ん…いえ…やす…?」
「おはよう、ちよ。あのさ…」
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「お待たせ家康っ、準備できたよ」
「ん…忘れ物はない?」
御殿に帰る前に、再びあのひまわり畑に寄りたいと伝えるとちよは嬉しそうに急いで支度を済ませてくれた。
装いを整えた立ち上がるちよに俺は手を差し伸べる。
「手、繋いでいくでしょ?」
「…うん!」
手を握るだけで嬉しそうに笑うちよ。
この子が笑うだけで周りの雰囲気ごとキラキラ輝いて、隣にいてくれるだけで俺には勿体ないほどなのに…ひまわりのように一途に俺を想ってくれる。
こんな幸福があっていいのだろうか。
嫉妬や不安に駆られていた日々を一瞬で消し去ったあの景色の中で、もう一度ちよの笑顔を見たい。
「じゃあ、行こっか。」
この幸せを、目に、心に、焼きつけておくんだ。
〜end〜