第3章 目覚める瞳
元也side
衝撃すぎて頭が、追いつかない。
沙耶が、何かの拍子で思い出したら状況が一変するって?なんだ…心臓の奥がズキズキする。
良いように聞こえても、沙耶にとって最悪な事態を招くかも知れないってことか?
だから、カウンセリングが必要になる?
「それで、沙耶にバレーの事話した?」
「いや、あまり深く話をしなかった。
一緒にその場にいたとだけ伝えたけど、本人は、バレーをしてないってはっきり言ったんだ。
俺と元也は、バレーをしているって認識でいる。
言葉を選んで話さないと混乱するし、不安になっていたから、今は焦らず日常を取り戻すために、動けるようにならないと…」
聖臣の言う通りだ。
沙耶が、元気になればまたバレーの事も思い出すかも知れないしなぁ。
「そうだね、沙耶は今頑張りどきだもんね。
バレーは、一旦置いといて早く俺達と学校に行けるようにならないとね」
応援しようと聖臣に言うと困惑していたが、素直に頷いた。
「そうそう、稲荷崎高校との合宿日っていつだっけ?
その頃に、沙耶が戻って来てくれると嬉しいだけど」
話は、監督やコーチ父兄らで進んでいるけど、10月もしくは11月なのかにもよる。
今日は、部活が終わったらすぐにでも沙耶に会いに行く。
そうだな~好きな果物でも持っていけば、あの笑顔に会えるかな。
その時は、あの笑顔が俺にも向けてもらえるものだと思っていた。
宮兄弟が、会いに来たことによって、沙耶と俺や聖臣の関係も急速に変わっていく事も知らずにいたんだ。
あんなに誰かを思って沙耶が、泣く事もなかったと思う。
あのバカ達に引っかき回されて、その手を離さないように自分の傍に置いておけばよかった。
あんなに大事にしていた子を手放して、俺は…後悔することになる。
前みたいに…俺にだけ笑って欲しかったんだ。
俺にとって沙耶の笑顔は、極上のご褒美だったから。