第4章 マザーとグースとお嬢さん
エースとデュースは飛行術の授業中もユウのことを心配していた。
グリム曰く、フロイドに連れ去られたらしい。
俺たちは無事を祈ることしか出来ない。南無。
と、2人は心の中で合掌していた。
そして授業が終わり、制服に着替え教室に戻ろうとした時。中庭の一本の林檎の木の下で誰かが寝そべっているのが見えた。
随分と小柄で体育着を着ている。
先にそれに気づいたエースが、隣を歩くデュースの肩を叩く。するとデュースも気づいたようで、2人と1匹は顔を見合わせると、その寝そべっている人物の所へ小走りで向かった。
ユウは空を見上げ続けていた。
授業終了のチャイムがなり、着替えもしなくてはいけないためそろそろ動かなければならないということはわかっているのだが、身体を動かす事ができなかった。
ぼーっと空を見る。見たことがない鳥が目の前を横切った。
「お嬢さん、そんな所で何やってんだよ」
声がひとつ聞こえる。
そしてその後にユウの視界にエースとデュース、グリムが写り込んだ。
先程まで青色でいっぱいだった彼女の視界は一気に賑やかになる。
ユウは鼻の奥がツンッと痛むのを感じる。
彼らを見て安心したからなのか、何だか泣きそうになった。
「ユウが授業をサボるなんておかしいと思ったら、リーチ先輩に無理矢理連れてかれたんだって?」
デュースの言葉にユウは無言で頷く。
そんな様子の彼女を見て、エースは「なになに」と蹲み込んだ。
「フロイド先輩に嫌な事でもされたの」
まるで幼い子に語りかけるかのような口調だ。