第15章 引き合うさびしさの引力
「フロイド先輩……?」
ユウは膝から顔を上げ部屋を見回す。
「小エビちゃん……」
声は鏡台から聞こえた。
「先輩!フロイド先輩!」
ユウは鏡に向かって叫んだ。
鏡の表面を触るが、それはいつもと同じ普通の鏡で、しかし確かにそこから声は聞こえていた。
「オレ、今凄い辛い。
小エビちゃんのこと、忘れた方がいいのかなぁ……?
小エビちゃんはオレに忘れられたら悲しい?
小エビちゃんが悲しむならオレ忘れないよ」
小さなフロイドの声にユウは息を飲み、そして先程よりも大きな雨粒のような涙を目から溢す。
「忘れないで……忘れないでください先輩!私先輩忘れられたら凄く悲しいです……!
私も絶対にフロイド先輩のこと忘れませんからっ!」
両手で鏡を掴み叫ぶようにそう言ったユウ。
しかしそれ以降、鏡からフロイドの声が聞こえることはなかった。