第14章 夢みていたのおとぎ話の世界 2
何処かで雨の音が聞こえる気がした。
カリムがユニーク魔法でも使っているのだろうか。
それともこれは彼女の心の中の音なのか。
ジャミルは掴んでいたユウの手を引き、抱き寄せる。
肩がひんやりと冷たくなるのを感じた。
「ありがとう。本当に……ありがとう」
伝えたい想いがたくさんあった。
こんな俺を好きなってくれてありがとう。
俺のユニーク魔法がどんなものかもう知っているのに、変わらず目を見て話してくれるのが嬉しかった。
君がフロイドを追いかけようとした時、本当は引き止めたかった。
もっと早く君の気持ちに気づいていれば良かった。
こうして、過去形だったとしても気持ちを伝えてくれて嬉しかった。
しかし口から出たのは「ありがとう」の言葉だけ。
だけどユウにはジャミルの想いが伝わったのか、彼の服を掴む彼女の手に力が入った。
「私こそ……本当にありがとうございます……」
雨の音が聞こえる。
雨は止みそうにない。
この雨が止むまで、ここで身を隠していよう。
ジャミルは自分の頬を伝う熱に気づかないフリをし、彼女を抱きしめる腕に力を込めた。