第2章 Two scars
汗を流してスッキリしたところで、もう一度状況整理をする。シャワールームにあったシャンプーなどを見るからにして、明らかにここは日本ではない。ハグリッドは本当は誘拐犯で、海外に売り飛ばされてしまったのだろうか。なんてネガティブな発想が頭をよぎる。
同じ服を着て部屋のドアに手をかける。鍵はかかっておらず、すんなりと開いて、ギィっとドアが軋んだ。どうやらここは2階のようで、1階に続く階段が目の前にあった。ゆっくり階段を降りていくと、まるでそこは食堂のようになっていて、大きな長机とたくさんの椅子が並んであった。そこには眼鏡をかけた青年が1人座り、目の前にあるスープをスプーンで混ぜていた。青年は私の存在に気付くと、少し顔を歪めて額に手を当てた。
それと同時に鎖骨の下の傷が疼いた。生まれつきある稲妻マークの傷。じんじんと疼く痛みは少しずつ引いていき、青年の手もゆっくり額から離れていった。
「あの──」
「おお。も起きたか」
青年が口を開いと同時に、バンと音を立てて勢いよく扉が開く。そこには昨日見たハグリッドの姿があった。よかった。誘拐されたという可能性はこれでなくなった。ハグリッドのことを信じてないわけでないが。
ハグリッドが椅子に腰かけたのを見て、ひとつの椅子を引いてそこに座る。ハグリッドは嬉しそうに私と青年の顔を交互に見て、うんうんと頷いている。
「、こっちはハリー・ポッターだ。ハリー、こっちは・」
「僕はハリー。よろしく」
『私もよろしく、ハリー。あ、私は』
差し出された右手を戸惑うことなく握り返す。にっこりと微笑むハリーにつられて私も微笑む。壊れた丸メガネの奥の瞳は、青みがかった緑でとても綺麗だった。
「おまえさんらは今年一緒にホグワーツに入学するんだ。ま、仲良くな。そんじゃ、も起きたことだし、買い物に行こうか」
『もしかして私待ちだった?ごめん、ぐっすり寝ちゃった』
「かまわんさ。ハリーもさっき着いたとこだ」
ロンドンの街を3人で歩く。同じスーパーでも日本とは全く違う。珍しい街並みにキョロキョロする私の隣では、ハリーが入学に必要なものを読み上げていた。