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香るのは君のラベンダー

第4章 花火大会


待ち合わせぴったりの時間に日向の家の玄関が閉まる音がした。いつの間にか外に出てきてた日向の姿に息を飲む。
浴衣を着た姿は前にも見たことはある。でも、その時より大人びて、少しメイクもしているのだろう日向はすごく、その、なんていうか、……綺麗だった。


「あれ?朔斗が待ち合わせの時間にいるなんて、雪でも降る?」


いつもだったらそんな日向の冗談にツッコミを入れるところだけど、今の俺にそんな余裕はない。最近わかってきた。好きになるってこと。もう、日向のことしか考えられないし、こんな綺麗な格好で微笑まれたら見惚れる。見惚れて言葉なんて出ない。言葉どころじゃない。思考が追いつかなくなる。


「朔斗?大丈夫?」

「あ、あぁ。大丈夫。その…」


これまた新の入れ知恵だけど、普段と違う格好の女の子は褒めてあげなくてはいけないらしい。新に言われなくたって褒めてやりたいくらい可愛いのに、言葉が出ない。俺ってこんなに小心者だったっけか?


「朔斗?本当に大丈夫?熱でもある?」


そう言って日向の手が俺の額に伸びてくるもんだからのけぞった。


「大丈夫だって。熱なんかねぇから。少し夏の暑さにやられただけだから。ほら、行くぞ。乗れよ。」


言い訳して、日向の手を振り払ってすぐに自転車に跨って前を向く。このまま日向の顔を見続けてたら、俺の顔が赤いのがバレるし、もっと赤くなる危険性がある。


——結局、褒められなかった。

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