第21章 拘束※
「お先に失礼します」
次の日、仕事を終えたカホはいつものように家への帰り道を歩く。
今日の夕飯は何だろ、
そんなことを考えて足を進めた。
「カホさん」
ふと後ろから聞き覚えのある声がした。
振り向くとそこにいたのは沖矢だった。
「昴さん、偶然ですね」
「ええ、カホさんの姿が見えたので」
「買い物の帰りですか?」
「ええ、まあそんなところです」
カホは再び体を前に向けて歩き出した。
後ろから聞こえる彼の足音。
「昴さん、今日の夕飯は…」
カホはそこまで言って言葉を詰まらせる。
夕飯のメニューを当てようと思い出した沖矢の手元
昴さん、レジ袋持ってたっけ?
カホは動かしていた足を止める。
「ねえ昴さん…」
どこ行ってきたんですか?
そう聞こうと振り向いたカホの口に力強く押し付けられた柔らかな感触。
「んっ…!」
それが沖矢の唇だと気づくのにカホは時間がかかった。
いくら人通りが少ない場所だからって、こんなところで…
カホが歩いていたのは細い小道。
周りに人の姿は見られないがこんなとこでキスなんてするものではない。
ましてや今は夕方でまだ空が明るい時間。
昴さん!
そう言おうとしたが息が吸えないほど強く押し付けられている彼の唇。
そうかと思えば彼の舌が歯を割って中に入ってくる。
その中に舌で奥に押し込まれた小さくて固い何か。
カホは得体の知れない何かに恐怖を感じた。
何、なにこれ
だが呼吸も苦しくそれを押し返す余裕もないカホはその何かを喉の奥に通してしまう。
ゴクンッ
ほのかに感じる苦味。
喉を通った時に感じた錠剤のような固形物
薬?
そこまで考えてカホは急に猛烈な眠気に襲われた。
目の前にいる沖矢の顔が段々と見えなくなっていく。
カホが暗闇に堕ちる瞬間に見えたのは見覚えのある白い車だった。
フラっと倒れるカホを沖矢は腕で支えた。
そのまま横抱きにし近くに停めてあった車へ彼女を乗らせる。
眠りについたカホの唇に彼は自身の唇を重ねた。
そして眠っている彼女を見ながら彼は微笑んで言った。
おかえり、カホ