第3章 再始動
変な夢を見た。
起き上がると、夜中の3時とか。…中学生の時もよく変な夢を見てたけど、それ以上に変な夢。
……あんまり死ぬ前の夢とか見たくないんだけどなあ。前世とはいえ、仮にも私なわけだし。
しかも、あの“阿国”って誰。なんか鮮明にそれだけ覚えてるんだよな…。
ああ気持ち悪い。
しばらくベッドで天井をみあげていたけど、驚くほど喉がかわいていたことに気づいて台所へ向かった。
体を動かすと、じっとりとした嫌な感覚が体を襲う。全身汗びっしょりだった。
「………はあ。」
いい加減、こういったことにも慣れてきた。
「どうしたァ」
突然、真っ暗だった寝室に明かりがついた。ベッドの側のダウンライトがほんのりと。
眠そうな声で言い、もぞもぞと動く。
「…別に」
出てきた声はかすれていた。
「アッソ」
眠気に勝てず、パタリと動きを止めた。
あー、こういうときは心配してほしい。優しくしてほしい。暖かな毛布で包んでほしい。寒がりだし、私…。今は汗だくだけど。
もうすぐ春っていうときに、何でこんなことになるのか。マジで。
私はダウンライトを消して、寝室をさっさと出てリビングに向かった。
二人暮らしには少し狭くて古いマンション。私はそこで彼氏と暮らしている。
喧嘩もするし、お互いの嫌なところが見つかるけど、一応は上手くいっている。
寝室を一緒にしたいと言ったのは彼だし、それに賛同したのは私だ。けれど、変な夢を見る日は勘弁してほしい。私が起きる度に彼も起きるから。
でもこんなに夢を見て汗だくになるなんて初めてかも。そんなに嫌だったんだろうな。
麦茶を飲んだ私は風呂場へ直行し、シャワーを浴びた。汗まみれで気持ち悪いから。
じっと風呂場の鏡を見つめる。
「……黒死牟」
ぽたり、と髪から水が垂れる。
「………あなたは、誰の名前を呼んだの…?」
“阿国”とは誰。
私は、誰と重ねられていたんだろうか。