第76章 眠り続ける者の夢ー最終決戦ー
暗闇の中でもがきつづけた。
私は無惨の体の中にいる。
人間の手によって作られた鬼だからか何なのか、私は無惨の体の中で生きていた。
珠世さんを無惨の体の側まで運び、夜明けまで持ち堪えることが私の使命だった。無事私は今も自我があるけれど…。
珠世さんの声が聞こえない。気配も感じとることができない。ああ、いなくなってしまった。ここからは私一人で無惨を抑えなくては。
「やめろ!!死ね!!早く死ね無惨!!!」
私は叫ぶ。無惨は肉の塊で体を守り、日光を防いでいた。
先ほどから無惨の記憶が頭の中に流れ込んでくる。いつも死と隣り合わせだった日々。外を走るなんてことはできなかったこと。健康な人を恨めしく見ていたこと。
「無惨!離せ!!その子を離せ!!」
炭治郎くん。
もう死んでいる。
目覚めることはない。しかし、無惨が鬼にしようとしていた。
「うるさい黙れ!!」
「ッ!!」
無惨の声が聞こえた。
「お前に関係あるものか!!不死身の鬼狩りめ!!」
「そんなことをしてもお前は死ぬ!!炭治郎くんの勝ちだ!!これ以上足掻くことは許さない!!!」
「黙れえ!!!!!」
無惨が最後の力を振り絞って私を苦しめる。全身が痛い。私の存在そのものを分解しようとしている。
「お前は私が殺した!!黒死牟が二度も殺した!!それなのになぜ生きているんだ、汚れた血の一族め!!!」
「!?」
「邪魔をするな霞守!!私の邪魔を!!!」
「ッ!無惨!!!」
ダメだ。
そう思った瞬間、声が聞こえた。
『!』
…?
聞いたことのある声だった。
『会いてェんだよ』
……
誰だ
この子は、誰だ
どうして、こんなにも胸が苦しくなるんだろうか