第47章 夜の夢ー食むー
今宵は何もないからと縁壱さんが散歩に連れ出してくれた。師範は任務で行ってしまわれたけれど。
鬼殺隊に身を置くことにはなったが、まだ呼吸も習得していない。
それなのに、夜に一人、鬼に遭遇してしまった。
縁壱さんと歩いていたのに、鬼が現れて、阿国はここにいろと私を一人残して縁壱さんはどこかへ行ってしまわれました。
すると、もう一体鬼がいて、私の前に姿を現した。
私は夢中で逃げた。けれど、鬼に追い付かれた。
刀もない。何もない。身一つで鬼と。
気配で鬼の動きを追って、攻撃を交わしている内に鬼が止まった。何かと思えば、足元に死体があった。鬼殺隊の死体。
鬼はそれを目にし、ニヤニヤと笑ってむしゃむしゃと人間を食べ始めた。
それを横目に、倒れた隊士の刀をとって鬼の頚を斬った。初めてのことに心が落ち着かなかった。
鬼が倒れる。
その時、多分、私に魔がさした。
鬼は人間を食べる。それを目の当たりにして、あることが頭に浮かんだ。
鬼は人間を食べる。
なら、人間は?鬼を食べるのか?
鬼の皮膚をどうにかこうにかちぎって、指でつまむ。まだほんのり暖かい。
鬼を食む。
「あー…ん」
血の味がする。何か歯に当たると思えば、それは骨で。噛みきれないと思えば、それは髪の毛だった。
「阿国!!」
遠くから縁壱さんの声がした。
「阿国、どこだ、阿国!!」
やたらと焦った声だった。
「……もぐ」
鬼の体が崩れていく。今のが最後の一口だった。
不味い。血の味が口に広がる。ぶちぶちと筋肉が切れる歯ごたえも気持ち悪い。
だけど、もう慣れた。
「阿国、返事をしてくれ、阿国!!」
気配からして縁壱さんが反対方向に進んでいるのがわかったので、私は叫んだ。
「縁壱さん!阿国はこちらです!」
私が叫ぶと、縁壱さんは私に近づいてきた。
「阿国、無事か…」
その時、縁壱さんは私の姿を見て目を見開いた。