第5章 夜の夢ー痛みー
知らせを聞きつけ、私は走って産屋敷邸へ向かった。
全柱に知らせが行ったようだが、私が一番速かった。
屋敷の一角から師範の気配がした。
私は刀に手をかけ、その部屋に滑り込んだ。
「師範!!!!!」
その瞬間、どうか間違いであって欲しい。そう願った私の思いは、全て無駄となった。
「……あ」
私は畳の上にへたり込んだ。
「あ、ぁ。ああああああああああああああああああああああ!!!!!!!」
狂ったように叫び声をあげた。
血を流して倒れるそのお方のもとに駆け寄り、懸命に名前を呼ぶ。
「お館様お館様!!!起きてくださいまし、お館様!!!」
壁にも障子にも畳にも血がこびりついていた。冷たい。体温がない。そして、私は気づいた。
「…え?」
ない。
あるはずのものが、ない。
「お前が探しているのはこれか?」
その時。気配を感じるだけで目も向けなかった師範が私に声をかけた。酷く無感情だった。私には興味がないと気配が物語ったいた。
畳の上に、ゴロンと何かが投げ捨てられた。
見てはいけないのに、私は見てしまった。
「…あ、ぁ、……あぁ…あ」
先ほど叫んだからか声が上手く出せない。
生臭い血の匂いもとっても不快だった。
お館様の頸がそこに転がっていた。嘘だ。
こんなの、夢だ。
「どう、して、どうして」
私は刀を抜いた。呼吸を落ち着かせ、感情を落ち着かせた。
「どうして」
私はそれを最後に師範…いや、奴に斬りかかった。
もう師範でも何でもない。奴はお館様を殺し、その頸を斬り落とした。
「なぜ」
奴は私を一振りで外に弾き飛ばした。庭に放り出された私はなんとか立ち上がった。
「なぜです!!!!!」