第28章 夜の夢ー行動ー
私はとても後悔している。
今でも、ずっと後悔している。
私は縁側に腰かけて、庭を見渡した。
連れ添った主人が亡くなってしまった。
葬式もすんだ。
目の前にはまだわずか八つの息子と、そ二つ年上の娘が立っている。
「………私は、あなた達ほどの年に、鬼殺隊となりました。」
ほんの少しだけ、昔話を聞かせようと思った。
「女の身なれど、私は刀を握り闘いました。しかし、数年後のある夜に…私は、剣士生命を終えることとなったのです。」
顔の右側は傷が残り、麻痺もあるためうまく動かせぬ。左手はそもそも斬られて存在しない。体全体が大きく斬られて、今では歩くのもやっとの体。
怪我を負い、目覚めれば呼吸が使えなくなっていた。
「刀を握ることだけが鬼殺隊ではありません。」
私は生き残った。何のために?わからない、それはわからない。
「人間には力の限界があります。」
私達は鬼ではない。
すぐに死し、すぐに怪我をし、すぐに老いる。
「鬼との戦いは何百年も続くものと思いなさい。そして、その戦いのなかでこの産屋敷の家の者は刀を握ることはない。なれど、産屋敷はこれからも戦い続けなくてはならない。
いつしかそれを歯がゆく思うでしょう。悲しく切なく、重みに耐えられなくなる日も来るでしょう。」
あの夜、あの瞬間に。
私はなぜ奴を斬ることができなかったのか。なぜこんなにも弱いのか。
「それもまた、人間です。」
私は庭に降りた。
「弱くてもよいのです。泣こうがわめこうがかまいません。地に這いつくばったままでいるのではなく、立ち上がり、立ち向かいなさい。」
娘と息子は、たくましく返事をした。
けれど、その目には涙がたまっていた。
「大丈夫、まだこの母がいます。」
私はそっと子供達を抱き締めた。
死んではどうしようもない。生きているからこそできることがある。
後悔はしたくない。私はまだ立ち向かっていたい。
生きている限り、寄り添って、寄り添って。
後悔のないように。