第13章 【番外編】遠い記憶のその先に。
俺の朝は早い。
目が覚めてすぐにシャワーを浴び、ドライヤーで髪を乾かす。
毛先がくるんと内巻きになる様に丁寧に。
そしてスカート丈を調整した制服を身に纏い、ネクタイを締める。
化粧水に始まりマスカラまでのナチュラルメイクを施せば、どこからどう見ても女子高生な俺の姿が鏡に映し出される。
最後に下ろしたままの髪を、今日はどうしようかなと一通り悩んでから、結局ツインテールに落ち着いた俺。
仕上げにグロスを唇の上に滑らせれば、完璧な“歩ちゃん”の完成だ。
鏡の前でくるんっと一回り。
ふわりと揺れるスカートに、ツインテールの毛先が踊る。
偽りの俺の姿。
もうこの姿にすっかり慣れてしまった自分。
手を伸ばして指先で鏡に触れると、鏡の中の自分と手が重なった。
「……今更…」
そう。
今更ー…。