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きみを想う

第9章 正月


すっかり寒くなった森を、すずらんの家に向かい駆け抜ける。

夜に外で会うのも、そろそろ限界かな。
そんなことを考えていると屋敷が見えてくる。
パッと塀を越えて、通い慣れたすずらんの部屋の窓を叩く。

ガラリと窓が開き、すずらんが嬉しそうに迎えてくれる。

「カカシ!お仕事お疲れ様。
わっ今日寒いね」

ぴゅーっと冷たい風が部屋に入り込み、すずらん目を細める。

「うん、だからすずらんが風邪ひかないようにすぐ帰るね」

すずらんの表情が一瞬で曇る。

「…それは寂しい。
部屋じゃ、ダメ?」

上目遣いでそんなこと言われたら、断れない。
くるくると表情の変わるすずらんに、最近のオレは翻弄されっぱなしだ。

「じゃ、ちょっとだけお邪魔しようかな」

「うん!」

すずらんが弾んだ声でいい、どうぞ、と入りやすいように窓を大きく開けてくれる。
靴を脱ぎ、屈んで部屋に入る。

「お邪魔します」

部屋の中はストーブがたかれ温かだった。

「すっかり冬だね」

そう言いながらすずらんがオレの外套をハンガーにかけてくれる。

あったかいお茶いる?と聞いてくれるすずらんに首を横に降る。
貴重なこの時間を、少しでも長く2人で過ごしたかった。

オレが座ると、すずらんがちょこんと横に座る。
すずらんが手を伸ばし、オレの手に指を絡めてくる。

「カカシ、手冷たいね……。
指、真っ赤」

すずらんが、もう一つの手も重ねてオレの手を温めてくれる。

「すずらんの手はあったかい」

「カカシが冷たすぎるんだよ」

「そっか」

すずらんの熱が伝わってきて、じんわりと手が温まっていく。

すずらんがオレの肩に頭を乗せる。
フワリといい匂いが鼻腔をくすぐる。

最近は、すずらんからもひっついてきてくれるようになった。
サラサラの髪を撫でると、くすぐったそうに目を細めるのが猫みたいだ。

「カカシはお正月はお休みなの?」

「うん。流石に大晦日と三が日くらいは、休みだと思うよ」

「じゃあ、いつもよりいっぱい一緒に過ごせるね」

「うん」

嬉しそうなすずらんにつられて、こっちまで笑顔になる。
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