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きみを想う

第8章 別れ、そして…


本当に程なくして稽古が終わる。

縁側に出て、「すずらん」と声をかける。

「えっカカシ!?なんで!??」

振り向いたすずらんがワタワタとして、それからハッと気づいて、両手を後ろに回して隠す。

「手、どうしたの?」

「ん、今ちょっと見せられない感じで……」

そう言って目を逸らす。

「そっそれよりどうしたの?」

「大名様に仕事の話があって……」

そこまで言って、何も仕事の話をしていないことに気づく。
イッシン様はこの為だけに、オレを呼んでくれたのだ。
本当にあの方は……。

「カカシ大丈夫?」

途中で黙ってしまったオレをすずらんが気遣わしげに呼ぶ。
その時に出たすずらんの手を見てビックリする。

「すずらん、その手……」

すずらんの白い手は豆だらけで、ところどころに絆創膏や包帯が巻かれている。

しまった!という顔になってまた後ろに手を隠す。

「汚いよね!
ごめんね。こんな手で……。
カッチカチの手になって強くなったら、もう一度カカシに会いに行こうと思ってたの。
わたしは強いから大丈夫だよって。
それでーー。」

庭に素足のまま降りて、すずらんを抱きしめる。

「カッカカシ!?」

「ごめん。ごめんすずらん。
勝手に離れて…。
ごめん……」

目に涙が滲んでくる。
あんなに酷いやり方で突き放したのに、すずらんはずっとこんなにオレを想ってくれていたんだ。

すずらんが優しくオレの背中に手を回す。

「泣かないで。カカシは悪くない。
カカシはわたしを守る為に別れを選んだんでしょ。
ガイさんに聞いたの。カカシの過去のこと。
ごめんね。何にも知らなくて……。
でもわたし、絶対カカシを1人にしないから…」

ギュッとすずらんの手に力が籠る。

「わたし、絶対強くなるからね」

そこでぷっと吹き出してしまう。

「え?なんで笑うの?」

すずらんが心底分からないという顔でオレを見る。

「すずらんのことは、オレに守らせてよ」

そっとすずらんの頬を撫で、優しく口付ける。

「すずらん、大好きだよ。
オレのそばにずっといてほしい」

「うん。
わたしもカカシが大好きだよ!」

最後は涙声になってしまったすずらんを強く強く抱きしめた。
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