第7章 赤羽の猛攻
里に着くと、待ち構えていた綱手様にこっ酷く叱られた。
そして、1週間の謹慎処分。
これは、たぶん疲れ果ててたオレへの、綱手様の温情。
一夜明けて、すずらんの作ってくれたおにぎりとおかずで朝食を済ますと、オレはすずらんが入院している病院へと向かった。
すずらんはまだ目覚めていない。
毒のせいらしく、まだ2、3日かかるかもしれないということだ。
ガラリと扉を開けて、すずらんが眠っている部屋に入る。
拐われる時についたであろう痛々しいすり傷の数々、毒を入れられた腕の傷は、包帯でグルグル巻きにされている。
反対の腕には、2つの点滴。
椅子に掛けてすずらんの手をそっと握る。
「ゴメンな…。巻き込んで……」
震える声で呟くと、すずらんの手がピクッと動く。
「すずらん?」
微かに目が開く。
「…か、シ、泣いてるの?」
掠れる声でそう言うと、オレの頬に握っていた手を当てる。
「大丈夫…?」
自分の方がよっぽど大丈夫じゃないのに、なんでこの子はこんな時までオレを心配するんだろう。
本当に泣きそうになってしまう。
「ん、大丈夫。
先生呼んでくるね」
涙ぐんでしまった顔を見られたくなくて、逃げるように部屋を出る。
先生の診察を受け、まだ安静はしばらく必要だが、1週間ぐらいで退院できることになった。
応急処置が早くよかったから、思ったよりも早く回復しているそうだ。
心の中で、サクラに感謝する。
すずらんは診察の後、また気を失うように眠ってしまった。
しばらくすずらんの横顔を眺めてから、久しぶりにあの場所に向かう。
花屋で花を買い、墓に備える。
いつも、この手からこぼれ落ちていってしまう大切な人たち。
また、いつかすずらんも同じように……。
ぎゅっと目を瞑ると、毒のせいで冷たくなったすずらんの体の感触が生々しく思い出された。
………結局オレは、変われないのか。
自嘲ぎみの笑みをもらし、その場に立ち尽くした。
髪を揺らす風は生温かく、雨の匂いを孕んでいた。