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きみを想う

第1章 お見合い


「まーた、お見合い?」
書類がうず高く積まれた机から、眠そうな顔が覗く。
面倒くさい、とでかでかと顔に書かれている。

「みたいっすよ。今度は火の国の大名の娘さんで…、
おっ、なかなか美人…。
6代目もいい歳なんすから、そろそろ身ぃ固めたらどうすか?」

勝手にお見合い写真を開きシカマルが勝手なことを言っている。

「んー…、結婚、ね」

正直、今は火影の仕事で手一杯で結婚なんて考えられない。
ま、その前から結婚なんて自分には夢のまた夢だと思っていたけど。
それなりに女性とも付き合ってきたが、その延長に有るのはいつも別れだった。

「はい。とりあえず渡しときますね」

パン、と机の上のギリギリ紙一枚分を置けるスペースにシカマルがお見合い写真の入った封筒を置いて、「じゃ、オレちょっと昼飯行ってきます。」と、部屋を出て行く。

そういえば、砂隠れの恋人が来てるんだっけ…。

上忍師時代の教え子たちもいつの間にか大きくなって、恋をする歳になったんだな。
そりゃ、歳もとるわ…。

微笑ましい部下たちの成長に自然と口布の下の頬が緩む。

 ふ、と目線を落とすと、お見合い写真が目に入る。
封筒から出し台紙を開くと、色白で艶やかな黒髪の女がこちらを見て静かに微笑んでいる。
明らかにお嬢様、という感じの佇まいだ。

「……」

大名の娘なら無下には出来ない。
とりあえず会うだけ会って、適当な理由をつけて断ろう。

パタンと写真を閉じ封筒に入れて適当に後ろの棚に放り投げると、溜まっていた資料に判を押す作業に戻る。



 お見合い当日。
面白半分に付き添うと言う綱手様の申し出を丁重にお断りし、指定された食事処へと向かう。
これも火影になった自分の仕事だとは思うのだが、どうにも気が重い。
はー。とひとつため息を付いて暖簾をくぐり中へ入ろうとしたとき、裏庭からわーわーと、人の言い合う声が聞こえてきた。
今日は貸し切りと聞いていたので、不思議に思って裏に回ってみる。
そして、そこで見た光景に文字通り面食らってしまう。
艶やかな着物のお見合い写真の女が、大きなカエデの木に登り下を見下ろしている。
下では、大名であろう男と従者らしき人達が木に群がっていた。

「すずらん!今すぐ降りてきなさい!」

「お嬢さま!降りてきて下さい!!」
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