第18章 人の生
ラビはバクに呼ばれ、執務室に訪れていた。
初めて足を踏み入れる執務室を遠慮なくキョロキョロと見回す。
バクの執務室は開放的な立地で、ここが地下施設だと忘れてしまいそうだ。机や椅子等の調度品は中華風のデザインで揃えられており、気品を感じる。流石、アジア支部の最高権力者の部屋である。
「へー。どっかの室長の部屋とは大違いさ」
「むっ!俺様の城が劣っているとでも言いたいのか?!」
「イヤイヤ逆さ、逆!!」
あの一面書類まみれの、足の踏み場もない室長室を思い出す。みんな書類を避けて歩く事を諦めて、踏みつけている始末だ。
「そーいや、俺が保護することになってるイノセンスは?」
「君達が黒の教団へ戻る日に渡すことになっている。それまではこちらでも研究させて欲しい」
「流石科学班さ」
「できればラビ、君のイノセンスも見せてほしいのだが!
今はフォーに稽古をつけてもらっているから、イノセンスは不要だろう?!」
「はは、まだ稽古続くんか。
後で研究室に寄っ……
――――――いや、見せねえ」
「む?なぜだ?」
「イノセンスを見たいなら……
すみれが此処、アジア支部に居た頃の話をのして欲しいさね!」
「彼女に直接聞けばいいだろう!」
「そうはいかねーから頼んでんさ」
「いやしかし、他人のプライベートを…」
そう簡単に話す訳には、と渋るバク。
ラビは「ふーん」やら「へー」と余裕の、否
。イヤらしい笑みを浮かべる。
「あ、じゃあすみれに言っとくさ!
支部長はすみれの写真をこっそり―――、」
「待て待て待て待て」
「他人のプライベートを曝すのは、」
「よしっ!!
男同士の話をしようじゃないか!!」
何処からともなくウォンが現れ、お茶が準備される。ラビはウォンに半ば無理矢理椅子に座らせられた。
「あれは数年前。
俺様が建築中の地下聖堂に迷い込んでしまった時……」
(フォーの、支部長の迷子の話。本当だったんか)
ラビはウォンが入れたお茶をズズ…と飲みながらバクの話に耳を傾けることにした。
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