第7章 救出作戦
その夜、○○は寝付けずにいた。隣ではカラ松も目を開けている。
「眠れないのか?」
「カラ松もでしょ?チビ太がひどい目にあってるかと思うと眠れなくて」
「あいつは昔から打たれ強い奴だ。そう簡単にはくたばらないさ。俺が心配してるのは、その打たれ強さで殺されやしないかってことだ」
「それはないわ。公開処刑にはたくさんの貴族が集まるはずよ。恐らく見物料を取るでしょうね」
「そうなるとすぐに殺されることはない、か」
「もし取らないにしても、せっかくの見せ物を台無しにしたら街の人たちが黙ってはいないわ」
「最悪の場合、暴動が起こる可能性もあるか」
「エスカレートすればそうなるかもね。でも救出はまた別。それはそれで盛り上がるはずよ。だって、みんなは日常と違うことが起こればいいんだもの」
カラ松は膝を叩いた。
「なるほど、そういうことか。それは考えなかったな。みんな人が殺されるのを喜んで見てるんだとばかり思っていたぜ」
「中にはそういう人もいるかもだけど、ほとんどはそうよ。奴隷のときに聞かされたから間違いないと思う」
「ああ、そうだったな」
辛かったのかうつむく○○を優しく抱き締めるカラ松。
「ありがとう、カラ松。今は幸せだから大丈夫よ」
そう言ってカラ松の腕に手を添える○○。二人はそのまま心地よい眠りについた。
まだ日が昇らないうちに目覚めた○○はカラ松の腕からそっと抜け出し、厨房へ向かう。チビ太がいないかわりに朝ごはんを作ろうと考えたのだ。処刑は正午に行われるので、朝ごはんをしっかり食べて救出に必要な力を蓄えるためだ。
「えーっと確か調味料はここで…この鍋で…っ!おっもーい!何これ、重っ!やっぱり小さくても男の人なのね。力の差があるわ」
それでも何とか鍋を下ろそうと頑張ってみたが、大きいのと重いのとでなかなか動かせない。そのうち他の鍋が○○の頭に落ちてきた。とっさに頭を手でかばい、目を閉じる。が、衝撃と痛みは襲って来ない。目を開けるとそこには鍋を手にしたカラ松がいた。
「頑張ろうとする姿勢はいい。だが一人では危険なときもある。遠慮なく起こしてくれ」
「カラ松…。ありがとう」
二人で朝ごはんを作っていると、十四松が起きてきた。
「あ、おはよう!カラ松兄さん、○○ちゃん」