第9章 好意と本音【期末試験】
※轟視点
リカバリーガールの提案により、帰り道、彼女と一緒に下校する。そこでの一条はまるで警戒しているみたいで、目を泳がせていた。
その行動は遠慮している雰囲気とも明らかに違っていた。
(…‥俺は、何かしたか?)
以前、病院で見かけて、アイツの抱えているものを少しでも譲ってほしいと思い、衝動的に抱き締めた事があった。
何か自分にできる事があるならば、力になりたかったからだ。
でも、それがいけなかったのだろうか、
『…‥』
「……」
いつもなら、この空気の中、彼女の方から会話が進んで行くはずだが、そうなる雰囲気ではない。
だから、自分の方から口を開いた。
『疲れてるのか?』
「あ…、忙しかったから、かな、それほどでもないよ。」
『そんなわけねぇだろ。』
「あはは、」
何とも嘘っぽい反応だ。あまり気を遣われたくないんだろうが、そう言われて、黙る程、心は腐っていない。
彼女の表情を改めて見つめると、どこか無理しているかのように、疲れが滲んでいた。それと同時に目元に見える隈が疲れをより際立たせていた。
(‥‥‥‥)
何があったら頼ってくれと伝えたはずが、結局アイツは全然頼る事なく、結果、この状態だ。自分で抱え込んでいるのではないだろうか。
それがもどかしくもあり、虚しさを感じた。
ヒーロー科と普通科。
お互い違うクラスで、会う機会が少ないからこそ、余計そう感じるのかもしれない。
『隈、ひどいな、』
そんな些細な不安からか、彼女の目元に触れようと手が動いていた。
「や、やめて!」
『…‥!』
「あ、っご、ごめん、びっくりして‥‥」
彼女は焦ったかのように、目を泳がすと、やがて避けるように俺の手を振り払った。振り払う音が鮮明に耳に残っていた。
『心配してくれてありがとう。でも、そこまでしなくていいから‥‥』
「‥‥‥‥‥」
まるで、俺を拒絶しているかのようだ。
(‥‥‥なんでだよ、)
体育祭終わり頃から、そんな雰囲気を感じ取ってはいたが、明確に態度に表したの今回が初めてだ。
ここまで距離を置かれるなんて、思っていなかった。