第8章 距離感と興味【原作編(職場体験)】
※一条視点
彼と別れた後、頭を占めるのは、抱きしめられた感触と一つの疑問だった。
彼が私の事をどう思っているのか、その考えが頭の中を巡った。
素直に聞いてしまえば楽なのかもしれない。でも、言葉にするのが怖かった。一度振られている身で、自分からそのような事を聞き出す事は勇気が必要だった。
(‥‥情けない、な)
甘えてしまった罪悪感と同時に、嬉しいと思ってしまう自分が嫌で仕方なかった。
(‥‥ねぇ、どうしてなの、轟くん)
中学生の頃、私は振られた。
“そういう”対象として見れないから、だ。
だからこそ、
どうしてあの時抱き締めてくれたのか分からなかった
単なる親切心なのか....それだけなら良かったのに、
あまりに距離が近すぎて頭が真っ白になっていた。
(…‥これ以上好きになりたくない。期待したくないのに)
このまま、想いだけが蓄積されてしまいそうで、辛かった。