第4章 毎日フロイド!【Floyd】
先輩は首や肩をポキポキ、鳴らした。
被っていたハットを脱いで、手を突っ込んでクルクル回す。
「あのさぁ小エビちゃん。」
「はい?」
「ん〜呼んだだけ。」
「そうですか…」
こんな調子で、暫くフロイド先輩は落ち着きなく動いた後、私の顔を横目に見た。
「小エビちゃん、オレのこと好きぃ?」
「えっ!」
突然口を開いたかと思うと、そう聞いてきたのだ。
私は。
「好きですよ、勿論…先輩は仲良くしてくれますし、頼りになって、こうしてモストロ・ラウンジに呼んでくれたりして」
フロイド先輩が言う"好き"は男の子としてか、先輩としてか。
答えは後者。考えなくても分かる。
私は精いっぱいの笑顔で答えた。
"先輩として"あなたが好きです、と。
「じゃあさぁ、」
彼はずい、と近寄ってきて溶けた瞳で私を見る。
「オレと付き合わね?」
…
…
時が、止まった気がした。
心臓がそれこそ、エビのようにビクンと跳ねた。
フロイド先輩の両手が私の手を握る。
…けれど、私はそれを振りほどいて立ち上がった。
「ごめんなさい!!!!」
モストロ・ラウンジを出て、振り返らずに鏡の前まで走って、オンボロ寮まで逃げ帰った。
ごめんなさい。
もう何もかも分からない。
付き合わね?ってどういうこと?
エースの言う通り、先輩が私を好き?
もし本当なら嬉しい。私も好き。
だけど、違う。
あれは彼の気まぐれだ。
或いは、暇つぶしにからかわれているのかもしれない。
第一、先輩は私のことを好きだとは一言も言わなかったのだから。
そうじゃないとしても、いつか飽きて捨てられる。
やめて。私にチャンスを与えるようなことを言うのはやめて。
期待してしまうから。
彼の気分に振り回されて傷つくのは絶対に嫌。
だから…
私はフロイド先輩と、付き合えない。
To Be Continued…