第7章 小ジャガ。をプロデュース【Vil】
アタシにとって美しさとは、アタシの存在を照明するもの。
アタシ=美しい=アタシの方程式は常に成立していなければならないもの。
だから当然、
アタシが触れるものも全てが美しくないと許されない。…
◆
学園の空気は、茹だる暑さと身体にまとわりつく湿気が支配する。
これはカクカクシカジカで、妖精達に大切な魔法石を奪われてしまい学園中の空調が駄目になった為だった。
・・・
「あの、どうでしょうか…?」
「ちょっと黙ってて。今真剣に考えてるから」
ムワッと広がる日本の夏のような暑さを暫し忘れ、ひんやり冷えたポムフィオーレ寮では衣装合わせが行われていた。
斯く斯く然々の理由で、妖精たちのファッションショーに乗り込むことになったカリム、ジャミル、レオナ、ラギー、監督生の衣装合わせである。
…因みに、男子たちの衣装合わせは20分前に終わっている。
が、監督生だけがポムフィオーレ寮衣装部屋にてヴィルとクルーウェルに、着せ替え人形よろしく様々な布を宛てられていた。
二方は先刻から白い布を何枚も手に取り吟味しては、
「違うわ」
「何が足りない?」
「もっとこう、根本的に何かが…」
「もっと似合う柄がある…」
と首を捻る。
監督生がどの布を羽織っても、二人の首は縦に振られない。
(やっぱりモデルが悪かった…?)
と監督生は不安になる。
だって、カリム先輩はこういうのに慣れているしジャミル先輩は彼の従者で背も高い。
ラギー先輩は細くて可愛らしいしレオナ先輩は言わずもがなといったところ。
外国人の鋭いお顔立ちが羨ましくなる。
普通の女の私には、オートクチュールの生地など似合わないのかも知れない。きっとそう。
そもそも私、ファッションショーには出ないのに。
けれどそんな事をファッションの鬼とトップモデルに言えば怒られそうなので、口を噤んだ。
だんだん監督生は(何もしていないのにすごく)疲れてきて、しかし一寸でも動くとヴィルに「動かないッ!」と叱られる。
「一体何がダメだって言うんだぁ?オレ様には全部同じに見えるんだゾ。」
グリムは飽き飽きして、冷たい床に寝転がってしまった。
ボールルームでは先輩たちが終わるのを待っている。