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【HQ】喧 嘩 止 め た ら 殴 ら れ た !

第3章 3分の1でも選ぶとは限らない



 呆れながら、でも面白おかしく笑うと水田さんは大人しく残ったチューペットを親指と人差し指で摘まみ受け取った。持ち方にだいぶ疑念はあるが、すぐに口で器用に支えると身体を前かがみにさせながら足でブランコを揺すった。明日の方向に目を向けながら、チューペットを手で押し出すこともせず、時々上の空を見上げながらただ溶けてきたのが口元に落ちるのを待っている。
 俺も隣のブランコに座ってマネしてチューペットを口で支えながら吸った。横目で水田さんを見ていると首と額から汗が垂れるのを自然と目で追った。
 妙に、セミがうるさく感じる。いつもなら気にならないことが、今日はやけに耳に触った。これは多分、俺にとっても非日常的な出来事でもあったからだと思う。チューペットを口で支えながら、なんとなく自分の手首を目の前にかざした。あれくらいの細さなら本気で折ろうと思えば折れそうだとか、そんなたわいもないことを考えていた。

「ねぇってば」

我に返って、慌てて声のした隣を振り返る。

「さっきから呼んでたんだけど」
「ああ、ごめん。考え事」
「考え事ねぇ…」

謎の沈黙。

「なに」
「べつにぃ?」

 何か言いたげな含ませた発言だったけど、聞いたら自分も問いたださせられるかもしれないと思ってしなかった。
 待ちくたびれたのか、奥の方で固まっていて溶ける気配のない氷菓を見かねて大胆にガジガジと噛み始める。残りを強制的に破壊し、傾けて口の中へと放り込むと「新しく出来たショッピングモール知ってる?」と行動とは裏腹に軽い口調で尋ねてくる。
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