【HQ】喧 嘩 止 め た ら 殴 ら れ た !
第2章 夏に濡れ衣ぎを着させたい
〝「青春を駆け抜けろ!」〟
そんなキャッチコピーを掲げているのはスポーツ飲料水のCMだ。
今話題の二千年に一度の美少女が制服姿でスポーツドリンクを飲むCMは、今や国民の誰もが知っている。
(なんだよそれ、どうやんだよそれ)
しつこい程貼られた遠目でも分かる真っ青な広告に文句を飛ばしながら、稲荷崎高校の最寄り駅の改札を通り傘を差した。
ここ最近、雨が続いている。
確か天気予報では梅雨入りとか言っていた。登校中の雨の中にも関わらず、私はコンクリートに溜まった水たまりに日々の鬱憤を晴らすように、容赦なく靴裏を叩きつけ、傘を盾に早歩きで学校へと向かう。
もうすぐ、大嫌いな夏が来る――。
どうも〝夏〟という季節は周りの人達の気を狂わせる。
よくある少女漫画や小説も青春ドラマだって、舞台の八割は夏だ。友情も恋も、学校生活も。全部夏が加速(悪化)させる。
なんて厄介で憎たらしい季節なんだ。
夏の何がそんなにいいんだ。それに乗っかる人達も、みんないやらしい。そのくせ死ぬほど暑いなんて。嗚呼、夏に活発になる人って全員ドMの変態か何かなのか?
日本特有の湿度がある日は特に暑い。特に熱いなんて言葉で済ませたくないくらい暑い。湿度で蒸し暑く涼しくない、身体の体温を下げようと全身の汗が止まらない癖に、その汗という機能を無力化してくる。こっちだって汗かきたくてかいてる訳じゃないのに。
アフリカの現地の人でも「日本の方が暑い」と言うんだ。これ以上に説得力のある説明があってたまるか。