【HQ】喧 嘩 止 め た ら 殴 ら れ た !
第1章 喧嘩止めたら殴られた。
。。。。。
……………ダメだ、まったく集中できない。
これは周りがうるさいからとかそういうことではなく、単に私の気持ちの問題で集中できていないだけ。まあ、その〝原因〟は私ではないのだけれども。
とにかく、私の平和な高校生活が終わってしまうと思うと悲しくて仕方がなく授業にも支障をきたしてしまいこのざまだ。もはやこの感情を悲しいだけで表すことなんてできるはずがないし、私が許さない。日本語の表現が足りなさすぎる。
嗚呼、今までは本当に幸せだった。幸せって失って初めて気付くんだと実感した。今までありがとう、私の平和な日々よ。
お昼休憩を終えた午後の温かく静かな教室に先生のプリントを配る聞きなれた雑音だけが響く。回ってきた一枚のプリントを取ろうと引っ張ると、なぜかスルッと手から抜けた。またか、とは思いながら念のためもう一度強く引っ張ってみるが抜けない。もうこれ以上引っ張ると破れてしまう。
……なんだこいつ。
口が悪いけど心の中だからもう一回言わせて。なんだよこいつ握力ゴリラかよ。
それにこの仕打ち、今回が初めてなわけじゃない。黒板は見えないし、たまにプリント回ってこないし、プリントくしゃくしゃな時もあるし、落書きされてる時だってあるし、黒板見えないし。
でも今回のパターンは今日が初めてだ。先生達がプリントを配る回数が増えれば増えるほど、彼の落書きの種類も手渡すパターンも無限に増えていく謎の嫌がらせ製造機と化してスペックを上げていく。
振ることもなくただ腕を後ろへ送り頭の後で〝早く取れ〟と言わんばかりにヒラヒラと揺れるプリントを手に取るが抜けるはずがない。まるで彼の手の平にいるような気分だ。こいつは自分が原因だということを理解していないのか。いじめか? いじめなのか? 私は君の前世でも親殺したのか? もしかして私は前世で連続殺人犯でもやってたのか? それは悪い、私が普通に悪い。悪かった。だから――。
「あのー、角名くん離して…」