第2章 拝啓、ロボットさんへ【イグゼキュター】
「な、なっ…」
一瞬だけ触れ、離れて行ったそれにパクパク、と口を開けたり閉じたりを繰り返しているさくらの顔が赤く染まっていく。
それを見たイグゼキュターは、少し頭を傾け、いつもの目でじっと見つめた。
「好きです。愛しています」
「な!?なななな何て?!ごめんちょっと電波障害起こってるかも!!聞き取れなかった!」
「では何度でも言います。貴方が好きです、さくら」
「い、いいいいいや、バグ!?ついに思考回路がバグったんですよね!?」
「いえ、正常のようです」
「だったら偽物に…!!、っ…い、て…!」
「大丈夫ですか」
腹を右手で抑え、枕に顔を埋め始めたさくらは、痛そうに顔を歪めながらもコクコク、と頷いては笑った。そのまま、左手が浮き、イグゼキュターの頭の上に着地した。
「体は大丈夫…はは…何か、恥ずかしくて…思考は大丈夫じゃないけど……」
「ではまだ言った方がいいですか」
「何で追撃して殺そうとするんだ……はは…出会ったばっかりなのにね…ロボットさんは一目惚れでもしたのかな…そんなバカな事ないよね…」
そう言って頭から顔まで降りて来た手の親指が目元を撫でた。それに目を細めてまるで犬のように擦り寄る。
「わかりません。私は感情が極端に薄いので」
「わかんないのに好きなのかー」
「はい。…貴方に触れていたい、隣にいて欲しいと乞うこの気持ちがそうだとドクターは教えてくれました」
「…思ったまま口にするのどうにかした方が良いと思う…ホント聞いてるこっちが恥ずかしい…」
「では私は貴方から離れた方がいいでしょうか」
そう声色が少し変わった言葉は切なく聞こえた。
フッと笑ったさくらは小さく罵倒し、管が通ったままの両腕をイグゼキュターの首に巻き付けた。