第4章 旅立ち
夜。椿はキャラバンの自分の席付近で、寝袋で寝ていた。
寝ることはできたが夢を見た。
まだ小さかった頃。いつも母親に『これは椿のためなの。』『椿は私のために生きてくれればいいのよ。』と言われ続けていた頃。
悪夢だ。椿にとってはどんなことよりも嫌な記憶で嫌なもの。悪夢にうなされた。何度も夢だと気づいて起きたいと願っても覚めることのない夢。
「はぁはぁ。」
息も荒くなる。汗もかく。
「北条?』
隣で風丸が椿の異変に気づいて目を覚ました。逆隣の円堂を起こさないように風丸は椿に声をかける。
「おい、大丈夫か?」
どんなに声を掛けても起きない。
椿の前の席あたりで寝ていた鬼道が後ろのやりとりに気付いて起きた。
「風丸、どうした?」
「鬼道。北条がうなされてるみたいなんだが起きないんだ。息も荒いし汗も相当かいてる。」
鬼道はゆっくり立ち上がりタオルを取りに行く。
「これで拭いてやれ。」
風丸は首や額の汗を拭う。
「これだけうなされてるのに起きないのか。」
椿の息もさらに荒くなり、んん、と声をあげ始めた。
「これで円堂が起きないのが不思議でならない。」
風丸は隣の円堂を見る。
気持ちよさそうに寝ている。