第40章 ~槍木祐次郎の場合~
部屋の中には男の子がふたり。
もう一人の子は出掛けているようだ。
「新しくきた槍木祐次郎くんだ。中学1年生だからこのグループでは三番目かな。真面目な子だから仲良くしてやってくれ」
「へーい。ねえ先生、アレ買ってくれんの許可得られたー?」
「昨日の今日の話しだろう?もうちょっと待ってて。この子がこの部屋のリーダー、大塚文太くんだ。見た目はチャラいけど喧嘩しない子だから安心してね」
「見た目はチャラいって子供に対してもう少し言い方ねぇの?ひっでぇー」
「世の中の見たまんまを言ったんだ。髪は良いけど耳の穴はあんまり増やすなよー」
職員と男の子は随分打ち解け合っている。
先生と評するがタメ口。
それを、厳しく叱る様子もなく、普通の学校生活を覗いているようだった。
「祐次郎だっけ?ここ、お前のスペースな。最初にまず物に名前書いとけよ。これ誰のパンツ~ってなるからさ」
「………」
「あー…それは冗談なんだけど。初めてだからそんなにすぐ馴染めないよなぁ~」
文太くんが打ち解けやすい空気をつくってくれるが、数か月間、自宅に引き籠っていたせいで思うように自分が出せなくなっている。
自分でも驚きだった。
「聞き流してくれて全然いいんだけど、俺は高2で結構長い。ここの施設は年齢層高めな感じ。お前と同じ中1のやつはえっとー…1人だな。女の子だけど、あんま話したことないやつだ。それからぁー…」
「…あり、がとう」
「お?おおー、全然いいよっ!分かんないことあったら俺を頼ってくれ。前の施設は全然だったけど、ここの先生たち良い奴ばっかだからさ、ちゃんと相談にも乗ってくれると思う。裕次郎、こういうとこ初めて?」
「うん」
「まだ色んな部屋も案内されてないだろ?移動しながら話そうぜ」
見た目は金髪でピアス、黒い服装。
不良っぽいが性格は明るく、面倒見のいい人だと気づくことができた。
ここでの生活を教えてもらい、以前のように少しずつ話せるようになっていった。