第9章 after story
あの調査から数週間。
心地よかった風が段々と弱くなり、葉と葉の間からこぼれていた光は強く照りつけるようになりつつあった。
静かなそこでは、葉が擦れ合う僅かな音ですら響きわたっている。
一際目を引く大きな樹の下でうずくまり、手で顔を覆う人。
そこには太い幹に立てかけられた2つの花束があった。
後悔がどれほど虚しいかを知っていたというのに、それは残酷にも彼のいない合間に起こり、彼が知ったのは全てが終わってからだった。しかもよりによって、空っぽの部屋の前で呆然と立ち尽くしていた所にそれを知らせてくれたのは、先に報告を受けたアイツだった。
肩を震わせ、顔を覆う指の隙間からは一筋の雫が伝う。
誰にも気づかれないように声を殺し、肩だけを震わせる様子はいかにも彼らしい。
片手に握られているものはリボンだろうか。
彼にはとてもではないが似合わないピンクのリボン。
その持ち主が最後には笑えていたことも、自由を手にしたことも、
彼には知る由もない。