第7章 空白と決意
「今…君はずっと私だけを必要としてくれると過信して、君達が出会う前に君の心を掴んでおかなかった自分に後悔している。」
リアは何も言わずにエルヴィンの話を聞いていた。
胸の中がモヤモヤする。
自分は気づかないうちに何か大切なことを忘れていたのか。
君たちって……私と、だれ?
最近よく見る夢。
その中で自分は誰かと笑っていた。とても幸せそうに。
夢の中の自分は誰かに話しかけられて笑っているのに、その人の顔がどうしても見えない。
必死に手を伸ばそうとすると、哀しそうにその人は離れて行く。
待ってと言おうとしても声が出ず、夢でさえ足は動いてくれない。
すると自分は狂ったように泣き、笑いだすのだ。
その姿は自分ですら恐怖を感じる。
このことを一度エルヴィンには話したが、彼は悲しそうに笑うだけだった。
「エルヴィンさん。」
エルヴィンはリアの口から自分の名前が出たことに驚きと嬉しさを感じて顔をあげるが、リアの顔を見て再び苦しく笑う。
「私はきっと誰かを忘れてる。
でも私はその人を思い出しちゃいけない気がするんです。
…こわい。」
「なら一緒に忘れよう。私は君が笑っているのが1番いい。
少し昔話がすぎたな。少し眠りなさい。私が側にいよう。」