第9章 時を越えて〜顕如討伐〜
〜三太郎目線③〜
俺らしくもなく、そんな思い出に浸りながら信長様の元へと急ぐ。
上田城を立つ俺に
「三太郎さん、また一緒にお団子食べましょうね!」
舞様は笑顔でそう言った。
信長様の大望が叶えば、その約束も叶うだろう。
なぜか信長様と舞様と三人で茶を飲む光景が浮かんで、自然と頬が緩んだ。
野営地に到着し、天幕の外に跪いて
「申し上げます。」
と言うと
「三太郎か。入れ。」
と返って来た。
天幕に入り、今度は信長様の御前に叩頭する。天幕内には織田軍の武将たちと信興様、上杉謙信、真田幸村の姿もあった。
「報告せよ。」
その一言で、昨日の経緯を述べる。
「して、その輩はどこの者だ。」
「世鬼一族かと。」
そう俺が告げると
「世鬼一族だって?!」
「毛利か!」
武将たちが驚きの声を上げる。
「信玄の言うように、噂を聞いて興味を示したか。」
上杉殿が呟いた。
「相分かった。大儀であった。」
短く告げた信長様に
「舞様より文を預かっております。」
そう言って文を差し出すと、受け取り読み出す信長様。
「家康様と真田殿にも。」
二人にも文を差し出せば
「えっ?」
「なんで俺に?」
それぞれ驚きながら、文を開けた。
「くっ、三太郎。これはなんだ。」
文を読み、愉快そうに笑い出す信長様。その様子に興を引かれた三成様が
「舞様はなんと?」
問いかけると、
「読め。」
そう言って文を三成様に寄越した。
三成様が文を見て
「なんでしょう?この絵は信長様でしょうか?」
そう声を上げた後に読み上げ出した。
「信長様へ
三太郎さんと竹蔵さんを護衛に付けてくれてありがとうございました。おかげで無事に上田城へたどり着きました。
信長様からいただいたお小遣いで、お礼のお団子を買いました。
『信長様からいただいたお小遣いで買った』と話したらみなさんが信長様に『ごちそうさまでした』と言われていましたよ。
私もごちそうさまでした。とっても美味しいお団子でした。
もう一日、上田城でお世話になって明後日にはいよいよ春日山城に到着する予定です。
着いたらまた文を出しますね。
信長様も他のみなさんもどうかご無事で。
私は崩し字が書けないので、佐助くんに代筆をお願いしました。
信長様の似顔絵は私作です。似てるでしょ? 舞」