第7章 時を越えて〜顔合わせ〜
佐助と幸村が去って行った室内。
先ほどまで武将たちと戯れていた舞は憂い顔を浮かべていた。
そんな舞に
「舞」
声を掛けたのは信長。
「はい」
「500年後に戻るかどうかは、そう思い悩まずともいずれ貴様の中で答えが出る。」
「……はい。」
「案ずる必要はない。」
「……もし…」
「なんだ。」
「もし…もしも私が、この時代に残るとしたら…」
「ここで暮らせば良い。」
「えっ?ここで?」
「貴様は俺の持ちものだ。持ち主の元にいるのは当然であろう。」
「…持ちものって…。私はものじゃないです!…ふふっ…でも、ありがとうございます。」
信長の言葉に安心したのか、
「信長様を楽しませられるように頑張りますね!」
舞は笑顔でそう言った。
その様子に武将たちの顔にも安堵の色が浮かんでいた。
「ところで、舞様?」
「どうしたの?三成くん。」
「先ほどの佐助殿と舞様の会話の中に出て来た『ぱられるわーるど』とは一体なんなのでしょうか?」
現代言葉が飛び交う先ほどの会話は、武将たちにとっては意味不明な言葉のオンパレードだった。
「あー、それはね、同じ時間軸に存在する平行世界のことだよ。」
「平行世界…ですか?」
「うーん。説明するのが難しいんだけど…今いるこの世と同じなのに、そこにいる人や起こる出来事が異なるもうひとつの世界が同時進行で別に存在するってこと。佐助くんと話してたのは、私たちが知る歴史と今この世で起こってることが全然違うから、この世は私たちの知る歴史とは違うもうひとつの乱世なんだろうねって。」
「…もうひとつの乱世…」
「うん。パラレルワールドが本当に存在するのかどうかなんて、私も佐助くんも…500年後の世でも分からない。ただの空想だと言われればそれまでなんだけど…でも、この時代に来るまでは空想だと思ってたタイムスリップが空想じゃないって身を持って知った。だから、パラレルワールドも空想ではないんじゃないかって。そう考えると、納得いくことばかりなの。」
「そうでしたか。舞様がそう仰るなら、『ぱられるわーるど』は本当に存在するのでしょう。私もそう信じることにします。」
エンジェルスマイルで言う三成に
「三成くん。ありがとう。」
と舞もにっこり笑って答えた。