
第15章 時を越えて〜分岐〜幸村ver.中編

「ちっ、八方塞がりってやつか。」
我が船は壊滅状態、港に上陸もできず、進路も退路も塞がれた元就が悔しそうに呟く。
「でも、まあ最後の悪あがきってのも悪くない。」
そう言うと、懐から銃を取り出しーー
バァーンーー
引き金を引いた。
銃口から飛び出した弾はーー
「「「佐助!!!」」」
「佐助様!!」
佐助の胸元に命中した。
「うっ」
倒れる佐助。
「おのれ!毛利!!」
怒り狂った謙信が弓兵から弓を奪い、元就に向けて矢を射る。
シュッーー
迷いなく射たれた矢は、元就の脇腹を射抜いた。
ザバーンッーー
海へと倒れ落ちる元就。
「元就様!」
家臣たちが必死に救い上げ、小船を動かし沖へと去って行く。
「追いかけますか?」
家臣が聞くが、
「良い。捨ておけ。」
そう答えた謙信は、軒猿に船から運び出された佐助の元へと走る。
「…佐助」
青い顔で悲しそうに名を呼ぶ謙信。
「バカなことを」
そう言って項垂れた。
「…死んでません。」
その返答にガバッと顔を上げれば、
「謙信様。俺は生きてるので泣かないでください。」
何事もなかったように、地面に立つ佐助が言う。
「…佐助…」
安堵した謙信が膝をついた。
「これが助けてくれたんです。」
同じように膝をついた佐助が見せたもの
「護り刀か…」
銃弾が命中した部分は黒こげになってはいるものの、しっかり見える家紋は上杉のもの。
「はい。舞さんから預かってたのをすっかり忘れて、懐に入れたままになってたおかげで助かりました。」
無表情で眼鏡をクイッと上げながら言う佐助に、なぜか笑いがこみ上げて来る。
「ふっ、それはそのままお前が持っていろ。」
そう言うと
「帰るぞ」
と、謙信は踵を返し歩き出した。
信玄「ははっ、肝を冷やしたが、佐助が無事で良かったな。」
義元「そうだね。でも、なんでわざわざ運ばれて来たの?」
佐助「…それは」
竜「謙信様へのお仕置きです。」
佐助「……」
義元「お仕置き?」
竜「此度の作戦で軒猿と幸村様を仲間外れにしたお仕置きです。」
信玄・義元「「……」」
信玄「もしかして、そのお仕置きは俺たちにもあったりするのかな?」
竜「佐助様次第かと。」
信玄「佐助!とっておきのマキビシを贈ろう。」
義元「俺は『黄金のマキビシ』にしようかな。」
佐助「…考えておきます。」
佐助を怒らせるのはやめよう。そう誓う二人だった。
