第15章 時を越えて〜分岐〜幸村ver.中編
「ぐはっ」
敵は口から血を吐きながらその場に倒れた。
しばらくピクピクとしていた体はすぐに動かなくなる。その姿に
「ーーあっ」
我に返った舞。ブルブルと体を震わせてその場に崩れ落ちた。
「舞様?!幸村様!!!」
その時、『湯浴みの準備ができた』と言いに来た女中が、ただ事ならぬ雰囲気に部屋の中の様子を確認した途端、声を上げ、慌てて佐助を呼びに行く。
「佐助様!!!!」
その騒ぎを聞きつけ、集まった忍びたちは驚愕の光景を目にした。
舞は体を震わせ虚な目で座り込み、その傍らには木刀が転がっている。
血を流し倒れ、動かない幸村。
体に矢が突き刺さり、同じように動かない村正。
そして、敵であろう忍びの男は刀が体に突き刺さったまま、口から血を流し絶命していた。
「舞さん!幸村!!」
佐助が叫んで側に駆け寄る。幸村の脈を取り
「大丈夫だ。生きてる。運んで。」
そう軒猿に指示を出す。
そして、
「舞さん…」
名を呼び緩く抱いて、震える体をさする。
すると
「わあああああーーー」
舞が大声で泣き出した。
「村正が、むらまさがーーっ」
「ゆきむらもーーいやーーーっ」
そう叫ぶと、舞はパタリと意識を失くした。