第14章 時を越えて〜分岐〜幸村ver.前編
光秀と舞の様子を見守っていた武将たち。
「じゃあ、これで帰る理由はなくなったな?」
落ち着いた頃に政宗が言う。
「えっ?あっ、あの、それは…」
しどろもどろになる舞。
「まだなんかあんのか?」
今度は幸村が問う。
「光秀さんはああ言ってくれたけど、お嫁に行けなくて明智家の跡取りが産めなかったらどうしようって…。妻は私一人にしてくれるなんて人は早々いないだろうし…。」
「はあ?お前バカじゃねーの?」
「ばっ、バカって…だって、お嫁に行けなかったら、子も産めないでしょ!」
「そーじゃねえ!お前が嫁に行けねーとかあるわけねーだろ。」
「あるわけねー。ってなんでそんなこと、幸村に分かるのよ!」
「分かるから分かるんだよ!このバカ!」
「まっ、また…何度もバカってーー」
「二人とも、どうどう。」
とんでもない舞の勘違い発言から幸村との口論に発展し、ヒートアップして行く二人を佐助が宥める。
「だって、幸村が『バカ』って!」
まだ熱の収まらない舞に
「舞さん、君がお嫁に行けないなんて100%あり得ない。俺のマキビシ全部を賭けても良い。」
「……」
「佐助、マキビシ全部って…賭ける価値の度合いが分かんねー。」
「幸村は黙ってて。舞さん、心配しなくても君をお嫁に貰いたい人も、妻は君一人が良いって言う人も俺の知る限り両手で足りないくらいはいる。だから、大丈夫だ。」
「佐助くん…慰めてくれてありがとう。…そうだよね。先のことを勝手に心配しててもしょうがない!お嫁に行けなくても光秀さんがいるし、いざとなれば光秀さんがお嫁さんを貰えば良いんだし…無駄な心配するのはやめる!!」
「……」
そう言うと『お茶の準備をして来る』と言って、舞は部屋を後にした。
残された武将たち。
幸村「はー、やっぱり分かってねー。」
信玄「幸、男ならあそこで『俺がもらってやる』くらい言って欲しかったなー。」
幸村「(ボソッ)言えたら苦労しねーっつーの。」
信玄「ん?なにか言ったかな?」
幸村「なにも言ってません。」
政宗「しかし、舞のあの鈍感さと自己評価の低さは異常だな。」
秀吉「過去に何かあったのかもな。」
光秀「あの感じだとそうだろう。」
佐助「舞さんは確か…」
家康「確か何?」
佐助「確か、俺の前に婚約者…許嫁がいたはず。」
一同「はぁっ?」
信玄「許嫁となにかあったのか…。」
一同「……」